Column コラム

2024年10月10日

公正取引委員会と中小企業庁による、手形等のサイト短縮に関する注意喚起

公正取引委員会と中小企業庁による新たな注意喚起
2024年10月、公正取引委員会と中小企業庁は、親事業者が手形などで下請事業者に支払う際の支払サイトに関し、11月1日以降に適用される新ルールについて注意喚起を行いました。

経済産業省:手形等のサイトの短縮に関する注意喚起を行いました

この注意喚起では、特に「手形等の支払サイトを60日以内に短縮する」ことが求められています。従来、手形による支払サイトが90日や120日と長期間にわたるケースがありましたが、これが下請事業者のキャッシュフローに悪影響を及ぼすことが問題視されていました。

2024年4月30日には、公正取引委員会が2024年11月1日以降、60日を超える支払サイトの手形等を交付した場合には、下請法(下請代金支払遅延等防止法)により指導対象となる可能性があるとの方針を発表しています。これに基づき、長期の手形使用を避けるように親事業者への指導が行われる予定です。今回の新ルールは、下請事業者の経営を安定させ、より良い取引環境を整備することを目的としています。

なお、支払方法を手形等から現金払いに変更したり、手形のサイトを短縮する際に、下請代金を一方的に引き下げたり、発注後に減額する行為は下請法で禁止されている「買いたたき」や「下請代金の減額」に該当するおそれがあります。さらに、手形等から現金払いに変更する際、下請事業者からの給付を受けた日から60日を超えて支払期日を定める行為も、下請法で禁止された「支払遅延」に該当する可能性があるため、十分な注意が必要です。

注意喚起の背景にある制度:下請法
今回の注意喚起は、「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」に基づいています。下請法は、親事業者と下請事業者間の取引における不公正な取引慣行を防止するための法律です。この法律により、親事業者は下請事業者に対して納品後60日以内に支払いを行う義務があり、また不当な代金減額や返品などを禁止しています。

手形等による支払いが長期にわたることで、下請事業者の資金繰りが厳しくなる事態を防ぐため、今回のルール改正が行われました。この改正により、親事業者が一方的に有利な条件で下請事業者に負担をかけることが防がれ、下請事業者の経営環境が改善されることが期待されています。

今後の展望
今後、公正取引委員会と中小企業庁は、親事業者が新ルールを遵守しているかどうかを監視し、違反が発覚した場合には厳正な指導を行う予定です。また、支払サイトの短縮に加えて、取引条件の透明性を高めるための施策も進められています。中小企業の経営を守るため、支払いの迅速化や契約内容の適正化が一層推進される見込みです。

この注意喚起は、下請事業者の権利保護を進める重要な一歩であり、下請事業者をはじめ日本のビジネス環境がより健全で持続可能なものとなるための大切な取り組みです。